ロド日記

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「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」ネタバレ有り感想。色々てんこ盛りの大正浪漫サイバーパンク?!

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なかなかにして重量級の作品が揃った2021年の春アニメなんですけど、この作品も僕は好きでした。

はい、「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」です。

残念ながらあまり話題にはなりませんでしたが、今時珍しい耽美的にして攻めた作品で、ドラマも練られた良作であったと、個人的には思っております。

 

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世界観

なんでこのアニメ観たか、っていうと、世界観ですね。それが抜群に俺好みでした。

江戸幕府が潰れず、そのまま残った明治64年という設定で、年号的には昭和なんでしょうけど、ぶっちゃけ下地は大正の世界観でいいと思ます。

その上に、妙に近代的なテクノロジーが乗っかってるというアンバランス感。この感じが絶妙でしたね。

で、江戸城天守閣があるんですけど、確か江戸城天守閣って明暦の大火で焼失して、以来建てられていないはずなんですけど……。そこを持ってくるあたりがケレン味というか、そういうとこも好きです。

で、ただ江戸城天守閣を描いているわけではありません、このアニメ。天守閣のサイドにシールドのような、防御壁のようなものを設けております。これがねー、めちゃカッコいい!

ただ、こうすることによって物見櫓としての天守閣本来の昨日は完全に半減しています。だって、片側の視界が全く確保されてないんだもんw

でも、めちゃカッコいい! 機能性よりもデザイン性重視です! そういうところがカッコいいんだよなぁ。

で、雰囲気としては、大正浪漫な匂いも若干ありつつ、どこか「峰不二子という女」っぽくもあり、という感じ。

アクション的には、主人公の使う武器が刀なので基本的には剣劇なのですが、明治期ではあるので銃器ももちろん出てきます。

そして、敵は改造人間のようなものなので、そういった異形モノですね。剣劇の異形モノ。こう書くと、なんとなく昭和初期の子供向けヒーローものっぽくも思えてきます。

他には、青い血、という要素もあり、色々とてんこ盛りですね。混ぜすぎじゃないか、とも思いますがw、しかしそれが良い。

あと全体的な、世相的な設定としましては、幕府は日本中から反発を食らっているらしく、その抑圧に躍起になってるという。非常に独裁国家的ですね。

普通はそんな状況だったら、主人公は反政府側にいると思うのですが、この作品では主人公はそんな独裁国家の暗殺部隊に所属しています。だからこそ、この主人公がどうなるのか、どう変わっていくのか、というところがポイントとなってくると思います。

大正浪漫で昭和初期で、それでいてサイバーパンクディストピアなごった煮的世界観。いいですねぇ! 超俺好みw

余談かもしれないんですが、この世界の主な公共交通機関は吊り式のモノレールなんですね。そこがまた良くてね。僕の大好きな帝国少年の世界観に似てて、非常に良いです。

帝国少年はググればいくらでも出てくるので、是非、調べてみてください! ハマる人には多分超ハマる、お勧めの絵師さんでございます。

キャラクター

主人公は雪村咲羽という色白の和装美人。先ずキャラデザが好きですね。昨今流行りの萌え絵とはちょっと違う、少しだけ劇画調も入っている感じがナイスです。

表向きは古書店の店主(この設定も良い)なのですが、その実、幕府の刺客として働いています。という一方で、個人的な復讐も内に秘めている。いいですねぇ。割とステレオタイプと言えば言える設定ですが、そのベタな感じが良いし、何より最近こういうのないですからねぇ。逆に新鮮味があります。

雪村の復讐は自分の生まれ育った烏森という村を何者かによって滅ぼされたんですね。その仇を探して、「鵺」という政府の暗殺機関に入ったのです。

そして、この雪村、その村独特の「青い血」の能力によって、異形へと変身するのです。まぁ、この血であったために村は滅ぼされてしまったのですが。で、その変身シーンなんですけども。

一旦全裸になります。

すごいですねぇ。地上波では体全体が発光してぼやかしているのですが、ネット配信ではバッチリハッキリ描いてました。

この「全裸になって変身」ってのが永井豪チックですよね。で、この時の絵が耽美的でいて、劇画なタッチでもあって、非常にカッコいい!

で、変身した後は、青い炎が全身からゆらめいていて、そのゆらめくタイミングで顔が髑髏になったりします。この、主人公なのにどことなく悪役めいている、異形感がカッコいい。ダークヒーローって感じ。

仮面ライダーも初期はそういうコンセプトだったらしいですね。今ではイケメン俳優養成特撮って感じですけど、元々はライダーってショッカーの改造人間、つまり悪役側だったわけですから。その日陰な感じが哀愁あって良かったんですけどね。

この「擾乱」の主人公、雪村咲羽には、そういった雰囲気が漂っています。

次は月城真琴。雪村の所属する「鵺」という組織にいる、七三分けのお耽美なイケメンです。実はこのイケメン、女なんですね。でも声優は蒼井翔太という男性が声をあてています。

これは攻めてますねー! 普通ならこういう役どころは女性が声をあてるんですけどね。でも、そういった意味では、穿った見方をすると、月城はアンドロギュノスなのかもしれません。

そういえば、月城はことあるごとに「自分の与えられた役割を演じるだけ」と言ってました。その、どこか達観した、諦めにも似た人生観は、自分が多くの人とは違う、自身の性の問題にもあったのかもしれません。

いつもバンドネオンを奏でていて、どこか芸術家気取り。口を開きゃあ気障な台詞を垂れ流す、この人もまたステレオタイプと言えばそうかもしれませんが、結構振り切っているので、むしろ清々しいです。

で、また彼女の独特の美意識に雪村はおろか、「鵺」という組織も振り回されます。結局、月城が何をやりたかったのか、よくわかりませんが、「月城がわからない」という感じは、悪くはありませんでした。

それから、花風エレーナ。雪村、月城、と来て花風です。雪月花が揃いました。金髪青い目の勝ち気な美人で、雪村のことが大嫌いという(^^;; 最初は月城同様、雪村の敵になるのだろう、と思って見ていたのですが、意外にも、最後は雪村とはひねくれつつも深い友情みたいなものが結ばれるのでした。

で、途中ね、このエレーナの出産シーンがありまして。いや、攻めてますね! 深夜とはいえ、地上波のアニメで出産シーンを放映するとはなかなかです。

出産しました、じゃないんですよ。そういう事後報告的なものじゃなくて、実況中継ですよ。もう、ガッツリ出産シーン。エレーナもすごく苦しそうで、雪村も「何か出てきた!」みたいなこと言って。

いやあ、出産シーンがある地上波アニメなんて初めて観ました。

それから、「鵺」のリーダーにして、雪村にちょっと気があるのか?という、渋くてダンディなイケオジ(というには若いか)・葛原仁。

この人が物語の核と言ってもいいですね。というより、裏のストーリーラインとしては、この葛原仁が主役です。ここで描かれる雪村の復讐譚の発端は葛原仁で、葛原のドラマがそのまま雪村のドラマに繋がっていきます。

葛原仁という本当の主役の物語を、雪村咲羽という脇役からの視点で描いた、と言っても過言ではないと思います。

そして最後に中村浅陽。7歳の女の子で、雪村の妹として暮らしています。しかし、この子の両親は雪村に殺されたという…。

なぜ一緒に暮らしているのか、というと、まぁぶっちゃけよくわからない。雪村も、なぜ自分がこの子を殺さずに助けたのかよくわからない。まぁもちろん、裏の設定ではちゃんとあると思います。おそらく、自分の境遇と重ねてしまったのかもしれない。

だけど、浅陽としては雪村のことが好きなんですね。なぜ親を殺した雪村のことが好きなのかというと、どうもこの浅陽、両親には酷い目に遭わされていたみたいなんです。それを思うと、ひょっとしたら本当の両親ではない可能性もあります。

そして実は、この関係性は雪村と葛原の関係とほぼほぼ同じなんですね。まぁ、雪村は実の家族と仲良く幸せに暮らしていたのですが。

物語のラストのラストに、この浅陽が重要な存在となります。多分、続編があるとしたら、間違いなく浅陽が主役です。

そんな感じでですねー、キャラ立ちしたキャラが多かったです。

だから、「キャラクターが魅力的」と言って言えなくもないんだけど、何て言うんでしょう、今ひとつ、こう、パンチが弱い感はあったんですよね、正直言って。

なんでかなー、と思うんですけどね。ちょっとキャラの立ち方がステレオタイプなきらいはあったかもしれません。

ストーリー

「擾乱」は基本的には1クールのアニメだったんですけど、全12話が3パートに分かれています。その感じも、なんかメリハリがついていて良かったと思います。

「愛と悲しみの山河編」

幕府と反体制派組織・クチナワが戦っていて、雪村が幕府の暗殺集団にいて、白い鴉と合体(でいいと思う)することによって異形に変身し、めちゃ強くなる、などなど物語の紹介がされつつ、雪村の目的、そして戦いが描かれていきます。

雪村の目的は、キャラクターの欄でも紹介したように、復讐です。そして、その相手はクチナワのボス・蛇埜目です。

なんですけど、いきなり第四話にして蛇埜目と対決します。もう、いきなり最終回みたいな展開なんですよ。

しかも、雪村のお兄さんは生きてたんですね。でも、蛇埜目の研究のために生き血を抜かれ続けていたという衝撃展開。烏森の血は、人を異形にする力があるみたいなんです。だからその青い血を使って異形を人工的に作り出し、戦力にしようってんですね。

しかもしかも、蛇埜目のために雪村を捕らえたのは月城という、まさかの裏切り。雪村も同じ青い血を持っていますから、蛇埜目にしてみれば良い素材なんですね。まさに鴨がネギ背負ってやってきたようなもんです。蛇埜目も強ぇし。

かと思いきや、月城は雪村を助けもするという、何がやりたいんだお前wという怒涛の展開。その裏切りの裏切りで月城は蛇埜目によって深手を負わされるという自業自得的展開。しかも深手を置いなからまんまと逃げおおせます。

いや、この人、何をやりたいのかさっぱりわかりません。この後も、主人公の敵になったり味方になったりします。結局それが最後まで続きます。

そして、雪村は復讐を果たすのですが、せっかく再開した兄を救うことは叶いませんでした。

ところで、月城が雪村に「大事なのは真実が何かじゃない、どう見えるかだ、自分の目で見えたものを信じろ」というセリフがあったのですが、その感じがなかなか印象に残りました。

普通逆なんですけどね。本当はどうなんだ、っていうのが大事だと思うんですけど、月城はその逆のことを言うんですね。よく言われることですが、実は隠されていると思われていた真実はずっと目の前に晒されていることが往々にしてあります。

よく観察すれば、真実は見えるところにある。そういうことなのかもしれません。

「雪未だ降り止まず編」

さすがに第四話にして最終回的展開だったので、ちょっと物語的には小休止といったところ。

とはいえ、第5話冒頭、つまり「雪未だ降り止まず編」冒頭は雪村が棺に入れられているシーンから始まります。さすがに主人公だから死にゃあしないだろう、とは思ったのですが。しかし、その「さすがに」は「さすがに」ではなかったりするのですが…。

ちなみにこの棺シーンは、浅陽の毒で仮死状態になっていたのです。そしてその毒は、雪村と浅陽が「鵺」の目をごまかして田舎へ逃亡できるように、と月城が渡したものでした。

とはいえ、今度は雪村と浅陽が「磐山県」という田舎の古寺で束の間の幸せを謳歌してたのを、月城がわざわざブチ壊しにやってきます。意味わからないですねー。

しかも、この雪村の逃亡は「鵺」に筒抜けだった模様。葛原も雪村たちを監視していました。そもそもこの古寺の管理人の姉ちゃんが「鵺」の人間だったりします。もう、どこにでも潜んでるな。

月城は雪村と浅陽を田舎に隠しながら、自ら浅陽を殺し、雪村にも斬りかかる。どうもこの人の行動はよくわからない。

ただ多分、月城は雪村の「危うさ」に美を見出したのではないでしょうか。だから、田舎にかくまいながらも、安定に安住して欲しくない。無事でいて欲しいけど、美しくも(危うくも)あって欲しい。芸術家肌で、独特の美意識がある月城ならではの愛情表現だったのでしょう。

そう、多分、雪村のことが好きだったんじゃないですかね。非常に歪んだ愛ですけれども、月城なりの美学、愛情であろうことは、やはりわかるような気はします。

月城は青い血を飲んで異形になり、雪村を追い詰めるのですが、デカい鳥に襲われて絶命します。このデカい鳥は異形となった葛原なのですが、葛原も月城と同じく、雪村を守ろうとしていたんです。

ただ、この時は、異形になったということから、葛原も雪村と同じ烏森の出身なのかと思いました。だから、あれだけ雪村に固執しているのだろうと。まぁ、違いましたが。

あと、月城が雪村に言った「真実は隠せば隠すほど表に出てくる」というセリフがあるのですが、このセリフもいいですね。

真実とは、実は白日の下に晒されている、でもみんなそれに気付かないだけ、とでも言っているようです。

みんな、大抵の人は、真実って、何か秘められたところにあると思うじゃないですか。でも、そうじゃない。目の前に晒されると、こんなところにあるはずない、と却って気付かないのかもしれません。

良いバッターを討ち取るには、案外ど真ん中を投げると打たれない、というのと似てますね。いや、似てませんね。

あとですねー、傷心の雪村と葛原が浜辺の廃屋で会話をするのですが、それぞれに業を背負った二人のやり取りは非常にドラマチックでしたねぇ。なかなかここのシーンは見応えがあって。

最近、なかなかこういうアニメはないですねぇ。それだけに貴重なアニメだったかもしれません。

「維新回天編」

雪村は葛原に、始末人として復帰して欲しい、と頼まれます。でも、浅陽とは、もう人を殺めない、という約束をしてるんですね。つまり、真逆のことを葛原に頼まれるわけです。ここで雪村は悩みます。

で、雪村は一旦故郷の烏森に帰って、気持ちを整理させてから東京へ向かい、結局、葛原の依頼を受けることとなります。

ちなみに、この時の旅に同行したのは古寺の管理人の、「鵺」のねーちゃんです。ここで身の上話をしたり、どことなく雪村と関係性を構築した、かに見えたんですけどねー…。

そして、古本屋に戻った雪村なんですが、月城の台詞を思い出し、「ベニスの商人」の本を開くと、そこに月城の残したメモが…。そこには烏森の村を全滅させた下手人、雪村の本当の復讐の相手は葛原であったことが書かれていました(で、いいと思う)。

ここでも月城です。ホント、一体何をしたいのやら。敵か味方かカーボウイ状態です。わかりにくい味方だったのかもしれません。

そうなんです。復讐の相手は蛇埜目じゃなかったんですね。

そもそも青い血を持つ烏森に対して、将軍は幕府への協力を何度も求めていたんです。でも、その要求を烏森は突っぱね続けてきました。

だから将軍は一転して烏森を滅ぼすよう、葛原に命令していたんです。協力しなければ、逆に強力な能力を持つ烏森は恐怖でしかないんですね(実際、反政府勢力のクチナワは烏森を狙っていました)。

そしてこの葛原、最初は烏森をクチナワから守るよう、将軍から命を受けていたんです。つまり守っていたんですね。それが逆に滅亡させなくてはいけなくなったんだから、まぁ、ひどい話です。

で、その、守っている間、葛原が雪村の母親におにぎりを差し入れてもらうんです。で、食べて、泣くんですね、葛原が。

この泣きのシーン、泣く感情というのは、なんとなくわかる気がします。

人間、施しを受けると泣くし、それにやはりごはんを食べさせてもらうと、何かこうホッとするというか、安堵感というか、そういうのもあると思うんです。

だから、ここで泣くというのは、ごく自然な感じだし、葛原のそれまでの人生を思うとグッときます。ここ、良いシーンでしたね。

このシーンがあるから、後の葛原にグッと感情移入できると思うんです。

結局、蛇埜目の生体実験にされるよりはマシ(後の雪村の兄のことを考えると、そういう面もあったかもしれません)、ということで、烏森を滅ぼしたのは、心ならず、ということだったのです。

なぜ葛原があれほどまでに雪村に固執するのか、よくわかりました。生まれて初めて自分に「人」として接してくれたのが雪村の母親だったんですね。その母親に、生まれて初めて、葛原は愛情を感じたのです。海辺の小屋のシーンで葛原の言った愛する人というのは、雪村の母親だったのです。

だから、雪村に固執し続けたのです。愛する人の娘だったから。最初は雪村に気があるのかと思ってたけど、そうじゃなかったんですね。もう、ほとんど親の気持ちで雪村を見ていたのでしょう。

また、雪村が浅陽を助けたことに、感情的なまでに理解を示したのか、それもわかりました。それは他ならぬ自分と雪村の関係性と同じだからです。

殺してしまった人の子供。しかも、任務でその子の親を殺さなくてはいけなかった。そして、その子供を育てた。同じなんですね。ただ一つ、葛原の場合は殺した親のことを愛していて、その点だけは違うのですが。その分、葛原の方が辛かったでしょう。

それを思うと、葛原の葛藤はいかばかりか。せっかく見つけた人を愛するという感情を意に反して自ら踏みにじらなくてはならず、その愛する人の子供の仇として、その後の人生を送らなければならない。そしてその子供に暗殺者としての技術を教えるという。葛藤しかない人生ですよね。

そういえば、「葛原仁」という名前は「クズを払う」ということで将軍より命名されたものなのですが、葛原の「葛」の字は、葛藤の「葛」の字でもある。

そういう意味も、制作者は込めたのかもしれませんね。

また、この葛原の「人は裏切る。敵も味方も。人の心までは支配できない」という台詞は非常に良い台詞だと思います。なるほどなぁ、と思う。

で、ですねぇ、最終回一つ前で、浅陽が生きてることが判明ました。

何がどうなって助かったのかはわかりませんが、多分、葛原が助けたものと思われます。

最終回を観て

実は第1話の冒頭、海辺での決闘シーンから始まるんですね。雪村が全裸になって異形に変身して、もう一人の異形と剣を交える、という。

何かこう、日本画を思わせるようなタッチで描かれたその戦いが(決着までは描かず)、すごくカッコ良くて。それで、「あぁ、これは観た方がいいな」と確信に至ったのです。

で、その第1話冒頭のカッコいいシーンの相手は葛原だったんですね。このアニメを見ていて、途中までは、あの時の相手は将軍なのだろうか、と思っていたんですが、違いました。

結論から言うと、基本的には良い最終回だったようにも思います。ですが、最後の方はあっけなかった気がしますねー。

クライマックスで単身江戸城に乗り込んだ葛原がラスボスの慶喜を見て「こんな老人か」と拍子抜けするシーンがあるんですけど、見た目だけで決めつけていいものかとも思います。

まぁ、確かにラスボスは強力だった方が盛り上がったと思います。実は将軍が最強の異形で、ラストは葛原と雪村が共闘してこれを倒す、って方が胸熱だったと思うし、何より慶喜が最強の異形だったら、それはもう胸熱だったと思います。老いて尚最強というのもいいし(「バック・アロウ」のゼツ・ダイダンみたいに)、異形の将軍が日本を支配していた、というの燃える。

それに、やっぱりラスボスは主人公が倒さなきゃいけないと思います。この作品だったら雪村ですね。だって、烏森を滅ぼせ、って命を出したのは将軍なんですから。その復讐の大元である将軍を倒すことによって、復讐譚は完成すると思うんですよね。

逆に言うと、今言った意味では葛原がラスボスを討ち果たしたことは、この物語の本当の主役は葛原だった、という証かもしれません。

でも、体面上はこの物語の主役は雪村なわけですから、やはり共闘で倒す、というのが最も美しい形かと思うのですが、どうでしょう?

更にその主人公の雪村は、以前故郷に帰るときに同行した古寺の管理人にして「鵺」の処刑人のねーちゃんに殺されてしまうんですね。

しかもこの殺したねーちゃん、雪村との戦いに一回負けたんですけど、情けをかけられて生かされてるんですよ。浅陽とかわした人を殺さないという約束で、雪村が助けたんですね。

まぁ、情けをかけた殺し屋に殺されてしまう、というのは、さもありなんという感じで、ひょっとしたらこの作品には合っていたのかもしれないけど、やっぱり腑に落ちなかったですね。

頑なにハッピーエンドを回避したようにしか見えないし、主人公の死という扇情的なラストという、物語のための死、という印象もありました。つまり、必然性がなかったんですね。

雪村の人生はあれだけ悲惨だったので、最後はハッピーエンドでも悪くないと思
うし、成立したと思うんですよねぇ。

何より、彼女の死で、葛原がなんのために一人ラスボス戦に挑み、死んでいったのか、意味がなくなってしまいます。多分、雪村には生きていって欲しかったからじゃないですかね。

また浅陽の、もう人殺しはしなくていい、と言われて殺さなかった相手に殺されたら、これもまた何のための浅陽の言葉だったのかわからない。

ついでに言ってしまうと、古寺のねーちゃんと雪村では、ある程度関係性が築かれたと思われたのに、この暗殺でそれもまた無駄になってしまった。

更には、雪村の死により、雪村が浅陽に願った、自分のような人生を送って欲しくない、という願いも、数年後の後日譚ではどうやら覆された感じでしょう(浅陽は雪村そっくりになっていた)。

つまり、最終回のほとんどの事象が理屈に合わない、というか、扇情的なクライマックスにしたいという、必然性のない「物語のための物語」になってしまっていたように思うんです。

逆に、今言った風に綺麗にまとめたくないから、ということだったのかもしれないですけどね。

まぁ、そんな感じで最後の最後に不満はあったものの、全体を通して見るとやっぱり俺好みで面白かったし、なかなか攻めてたし、何より人の業というか、そういうものを描こうという、そういう姿勢が感じられた、深いドラマがあったように思います。

見たままを見る

あとちょっと思ったのは、見たままを見て、そこから感じるという、ことですねー。

月城って、再三雪村に対して「見たままを見ろ」みたいなことを言ってました。

言われてみれば、雪村は見たままを見ていなかったんですね。

例えば、浅陽はわかりやすく雪村に対して愛情表現をしていました。しかし、雪村は「あの子は自分を恨んでいる」と、そんな浅陽の見たままの態度を信じないんです。

その後浅陽を信じることができはしたんですけど、随分遠回りをしてしまった印象です。

よくよく考えたら、我々も、つい懐疑的になってしまいますよね、日常生きていて。あの人、あんなこと言ってたけどホントかな、とか。

でも、案外、自分も含めて、人って大して考えていないんだと思います。だとしたら、表に現れている感情が、そのままその人の本音であることの方が圧倒的に多いんじゃないでしょうか。

あの人、自分に対してやたら好意的だけど、ホントは裏があるんじゃないかな、なんて思わない。

素直に相手の態度を信じてみましょう。

それで思いっきり騙されちゃったりしてw

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